臨床神経学

症例報告

ACTH単独欠損症とspinocerebellar ataxia type 3(SCA3)を合併した1例

小川 克彦, 鈴木 裕, 大石 実, 水谷 智彦1), 中山 智祥2)

日本大学医学部付属練馬光が丘病院神経内科〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
1)同内科学講座神経内科部門
2)同先進医学総合研究センター

症例は41歳の女性.主訴は四肢の脱力,発熱,意識障害.1996年(37歳時)に食欲低下と体重減少が出現した.1997年から歩行が不安定になった.1999年10月,低血糖による意識障害のため,当院内科に入院し,下垂体機能検査よりACTH単独欠損症と診断された.2000年6月,上記主訴で入院した.神経学的には,軽度の四肢の協調運動障害と開脚歩行をみとめた.頭部MRIでは,橋と小脳前葉の萎縮がみられた.MJD 1遺伝子内のCAGリピート数が74リピートに異常に伸長していたため,SCA3と診断した.過去の小脳失調症と下垂体ホルモン欠損症とが合併した報告例のうち,ACTH単独欠損症とSCA3との合併例はないため本症例を貴重な症例と考えた.

(臨床神経, 42:149−153, 2002)
key words:ACTH単独欠損症, spinocerebellar ataxia type 3(SCA3)

(受付日:2001年10月22日)