臨床神経学

症例報告

馬尾神経鞘腫にともなう正常圧水頭症に起因したパーキンソン症候群の1例

宗像 紳, 南雲 清美, 丹野 隆明1), 小島 重幸

松戸市立病院神経内科〔〒271-0064 千葉県松戸市上本郷4005〕
1)同 整形外科

馬尾神経鞘腫にともなう水頭症により,無動,安静時および姿勢時振戦,歯車様筋強剛,姿勢反射障害といったパーキンソン症状を呈した69歳女性例を報告した.正常圧水頭症に特徴的な尿失禁や痴呆はみられず,脳脊髄液たんぱくの高値,脳波では徐波,SPECTではびまん性の脳血流低下をみとめた.腫瘍摘出後,パーキンソン症状は消失し,脳脊髄液のたんぱくは正常化し,脳波,SPECT所見は改善した.パーキンソン症状の発現機序として,脳室周囲白質の虚血やそれにともなう代謝障害が,大脳皮質−基底核および基底核間の線維連絡回路網の複合的な機能障害をきたしたものと考えられ,水頭症の発症には脳脊髄液の高たんぱくが関与していると推測された.

(臨床神経, 42:131−135, 2002)
key words:パーキンソン症候群, lower body parkinsonism, 正常圧水頭症, 脊髄腫瘍, 馬尾神経腫瘍

(受付日:2001年6月28日)