臨床神経学

症例報告

海綿静脈洞症候群で発症した海綿静脈洞海綿状血管腫の1例

片田 栄一1)2), 松川 則之1), 牧 美奈1), 小鹿 幸生1)

1)名古屋市立大学大学院医学研究科神経病態学〔〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1〕
2)現 名古屋市立城北病院 内科〔〒462-0033 名古屋市北区金田町2丁目15番地〕

海綿静脈洞症候群で発症した海綿静脈洞海綿状血管腫の50歳女性を報告した.急性に右眼部痛,右眼瞼下垂,複視,右顔面感覚障害が出現し,初診時の脳MRIと脳血管撮影で右海綿静脈洞部に腫瘍性病変を示唆する画像所見をみとめた.非特異肉芽腫性炎症病変を考慮し,副腎皮質ステロイドの経口投与により,神経症候は改善傾向を示したが,発症から約1年後の脳MRIと脳血管撮影で右海綿静脈洞部に腫瘍性病変の増大をみとめた.脳生検による病理組織診断では海綿静脈洞海綿状血管腫であった.本症例は海綿静脈洞海綿状血管腫の増大を経時的に観察し得,増大の機序を考える上で興味深くまれな1例と考えられた.

(臨床神経, 42:930−934, 2002)
key words:海綿静脈洞症候群, 海綿静脈洞海綿状血管腫, 脳MRI, 脳血管撮影, 副腎皮質ステロイド

(受付日:2002年7月16日)