臨床神経学

短報

脊髄下部梗塞の1例―経時的MRI・電気生理検査による検討―

芝崎 謙作1)*, 米田 行宏1), 砂田 芳秀2), 田渕 正康1)

1)兵庫県立姫路循環器病センター神経内科
2)川崎医科大学神経内科
現 川崎医科大学神経内科〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕

脊髄下部梗塞例に,MRIと電気生理検査を経時的(発症日・4日・3週・7週・8カ月)に施行した.症例は66歳女性,突発する弛緩性完全対麻痺の前脊髄動脈症候群で発症した.発症日のMRI,髄液,末梢神経伝導速度は正常だったが,後脛骨神経刺激のF波が消失していた.4病日のMRIのT2強調画像で脊髄円錐部と円錐上部の灰白質・白質に高信号域をみとめた.3週後にF波は改善し,T2強調画像での梗塞巣は脊髄前角に限局していた.3週と7週後のMRIで腰髄神経前根と馬尾がガドリニウム造影効果を示したが,8カ月後には消失していた.発症7週から膀胱直腸機能はほぼ自立し,8カ月後には短距離の独歩が可能になった.発症時のF波消失が診断に有用で,経時的MRIで脊髄前角に限局した梗塞巣の描出や馬尾の造影効果が特徴的だった.

(臨床神経, 41:822−825, 2001)
key words:脊髄梗塞, MRI, 電気生理検査, F波

(受付日:2001年3月5日)