臨床神経学

症例報告

重症筋無力症・橋本病の合併例に心不全症状なく発覚した巨細胞性心筋炎の1例

神里 尚美1)2), 仲宗根 いづみ2), 砂川 長彦2), 小嶺 幸弘2), 柊山 幸志郎2)

1)現 県立那覇病院神経内科〔〒902-8531 沖縄県那覇市与儀1丁目3番1号〕
2)琉球大学医学部第三内科〔〒903-0215 沖縄県中頭郡西原町字上原207〕

69歳,女性.下肢筋力低下で初発,2年の経過で球・脳神経症状が加わり,重症筋無力症(myasthenia gravis;MG)と診断された.胸腺腫はみとめなかった.自覚症状はなかったが,胸部単純X線で心陰影拡大,24時間ホルター心電図で非持続性心室頻拍(ventricular tachcardia;VT)が頻発,心臓超音波・左室造影で瀰漫性壁運動低下をみとめた.心内膜心筋生検で,心筋細胞の変性・壊死と細胞浸潤に加え,多核巨細胞が確認され,巨細胞性心筋炎(giant cell myocarditis;GCM)と診断した.免疫学検査で血中CD4/CD8比,メモリーT細胞比率が上昇し,抗心筋抗体・抗骨格筋抗体が検出された.診断より4カ月後,急速に左心機能が低下したためステロイドパルス療法を施行したが,合併するMGの急性増悪をみとめ,不整脈死した.

(臨床神経, 41:813−817, 2001)
key words:重症筋無力症, 巨細胞性心筋炎, 橋本病, CD4陽性T細胞, 抗心筋抗体

(受付日:2001年9月11日)