臨床神経学

症例報告

上部および下部胸椎レベルに髄液漏出がみられた特発性低髄液圧症候群の1例

荒井 元美1), 高田 知季2), 一条 勝利3)

1)聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市三方原町3453〕
2)同 麻酔科
3)同 放射線科

特発性低髄液圧症候群の51歳,女性例を報告した.背部痛が出現した翌日から激しい起立性頭痛と嘔気が続き,安静臥床と大量の飲水を心がけたが無効であった.頭部MRIでは,硬膜が全周性に肥厚し造影された.脳槽シンチグラフィーで上部胸椎レベルと下部胸椎レベルに髄液漏出が描出された.それらの部位に硬膜外自家血注入をおこなった.症状は消失し,2週間後の造影頭部MRI所見は正常化していた.複数の漏出部位がみられた報告例はまれであるが,その可能性を念頭に置き,髄液腔全長にわたって髄液漏出を検索する必要がある.また脳槽シンチグラフィーで漏出部位が描出されるかどうかは,撮像直前の体位に影響される可能性があり今後の検討課題である.

(臨床神経, 41:775−779, 2001)
key words:特発性低髄液圧症候群, 頭部MRI, 脳槽シンチグラフィー, 髄液漏出, 硬膜外自家血注入

(受付日:2001年9月1日)